最近、NHKの深夜番組で、半分寝ながらつけっぱなしにして見ていた興味深いドキュメンタリーがありました。
半分寝ていたのでちょっと記憶が飛んでいるのですが、要約すると、それは超伝導の研究をしていたベル研のとある研究者が、データのねつ造をして論文を発表し、一時は最高の名声を得たのだが、ある時を境にその事実がばれ、当時のステータスは地に落ち、今ではとある田舎でひっそりと人目を忍んで生活している、という内容のものです。
超伝導研究の世界では、いかに高い温度で超伝導状態を実現できる物質を発見できるかが、もっぱらの研究目的になっているんですが、その研究者の場合は次々と有名科学雑誌に記録を更新する論文を載せていき、その名を世界にとどろかせていったのでした。
一方で、矢継ぎ早に目を見張るような成果を出し続けたので、追試を行っていた周囲の研究者の中には訝しく思っていた人もいたようです。そんなことがあり得るのだろうかと。
そして、最終的にはデータねつ造をしている事実がばれてしまったわけなんですが、どうしてばれてしまったのか想像できるでしょうか?きっかけはとっても単純なことだったのです。
とある2つの論文に載せてあった異なる実験に関するデータのグラフが、ノイズの揺らぎまで含めて、全く同一の形状をしていることが発見されたからでした。まあ、要するにグラフの図を使い回しをしていたということですね。
その後、調査委員会によるインタビューが行われ、様々なデータねつ造の事実が判明し、一時は、世紀の発見、ノーベル賞も時間の問題、と言われていたその研究者のキャリアは一気に崩壊してしまったのでした。
何でそうまでして自分の研究成果を出そうと思ったのでしょうかね。その番組では、業績の落ちていたベル研を代表する、数少ないスター研究者として周囲から異常なまでの期待と圧力がかけられていたから、とか、あまりにも研究分野が細分化し、詳しい内容まで内容を評価できる人間が少なくなってきていたために、自分の論文に責任を持つというモラルが欠けてしまったことを理由に挙げていました。
まあ、結局は本人の気持ちが、研究者としてのキャリアを手っ取り早くあげるという誘惑に負けてしまったからなんだと思います。僕なんかは、純粋な研究者でなく、半分エンジニアみたいな感じなので、そこまでしなくても、とか思ってしまいますけど、論文の数やその内容がもっぱらその研究者の評価につながる、学術研究の世界もそれなりに厳しい世界なんでしょうねぇ。
楽に人生を生きるなんてことは、そうそうないんだろうなと思いました。