今日は,メインカンファレンスの最終日で,ベストペーパーアワードの発表がありました.
結構いい発表ができたので,自分も可能性があるかなぁと思って密かに期待していたのですが,かなり不思議な展開になりました.
というのは,今回,この学会の主要なスポンサーになっている,とある日本人がアワードの発表をしたのですが(スポンサーである彼にかなりの選択の権限があるらしい),その時に述べたコメントがかなり意味深だったのです.
具体的に言うと,
1.なぜ日本のS社の業績が近年になって急激に悪化したのかを私は知っているし,そのことを自分はずっと前から予言していた
2.日本のT社は今は絶頂にあるがいずれS社と同じ道を歩むであろうということを自分は予期している
3.日本の企業は優れたメカトロニクスの技術を武器に世界の頂点へと登りつめたけれども,彼らは何のフィロソフィカルなアイデンティティーをも持ってはいない
というようなコメントでした.
そもそも,何でこの国際的,学際的な学会の場でそんな脈略のないことを言う必要があるのかがわからないのと同時に,結局アワードを受賞したのは全くその話とは何の関係もない研究をした人だったのです.
聞けばスポンサーとなっているその人は,もともとT外氏と同じグライダー仲間で昔からの知り合いであるらしく,さらに,その人はロボットの研究分野で有名なBクス教授の信奉者とも呼べるような人であるということ,おまけにT外氏が最近新聞の書評で批判的にコメントを書いたBクス教授の本の翻訳をした人だったのでした.
http://www.aai.jp/project/brooks.html
というわけで,T外氏が設立した研究所で出した成果をもとにこの学会に乗り込んだ僕は,完全に飛んで火にいる夏の虫の状態.何も知らずに無防備なままヒョコヒョコとやってきた自分の無知さ加減を思い知ってしまいました.
きっと嫌だったんだと思います.自分があまりよく思っていない人の研究所から来た人間によって,ある程度見栄えのする研究結果をもとに自分のテリトリーでプレゼンをされたということが.
僕の誤解なのかもしれませんが,何よりも,個人的な好き嫌いに依存した指標に基づいて自分達の研究成果が評価されたような気がして残念です.
そもそも,例えそんな感情を持っていてもわざわざ言葉で表現する必要がないだろうに(受賞者のことだけコメントすればいいだろうに),なんでそんなにあてつけがましくコメントしたのかが不思議でした.明らかに会場にS社の社員として僕が来ていることを意識しているとしか思えませんでした.
でもまぁ,企業人間よりも学校で勉強に励んでいるPhD studentに花を持たせてあげたいということもわかるし,このヨーロッパの場で,日本人が日本人に賞を授与するというのも,何となくあまり良い印象がないと思うので,この結果は必然だったのかもしれません.
というわけで,ここに来てコミュニティに対する印象悪化...ていうか,僕のあずかり知らぬところで生じていた思想の対立に巻き込まれたというか...完全にこれは事故です.
でもまあ,いろんな大学の人と個人的なつながりが出来たので,そのことを今後の糧にしようと思います.