会社オケで,ダニエル・ハーディングとの顔合わせ演奏があった.
今は,東京フィルの演奏会で指揮をするため来日しているそう.まだ,若干32歳で,見た目はその年齢よりもさらに若く見えた.僕は,芸術家というと,繊細で気むずかしいかも,という憶測をすぐしてしまうのだが,彼は物腰も語り口もナチュラルで,とても(というか勝手に)親近感を持った.
仕事をしながら,オーケストラ活動ができるということこそ,団員の皆がもっともピュアに音楽を愛していることの現われであって,音楽の原点であるという趣旨の言葉は,プロの音楽家の人々から度々耳にしてきたが,ハーディング氏もやはり,同様のことを言っていた.
顔合わせ自体は,プラハを3楽章通して演奏し,約30分で終了.ただでさえ時間が短いのに加えて,気持ちも高揚していたし,良い演奏をし,間違いのないようにしたいという気持ちで演奏していたら,あっという間に時間が過ぎていった.
演奏自体,とても楽しかったし,何か大きな目標に向かって団員が気持ちを集約していくプロセスを経験できたことは有意義であった.今回の出来事はまだリハーサルみたいなもので,これからの数ヶ月が本当の勝負なのだが,本番で最後の音を奏でるときの感動が脳裏にイメージされ,これから,そのイメージを具現化するプロセスを踏むことに対するモチベーションが一層高まった.
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顔合わせ会の後,「潜水服は蝶の夢を見る」というフランスの映画を見に行った.ちなみに,上映している映画館は都内でも数えるほどしかないのだが,巷では結構話題になっている.
あらすじを書くとネタバレになるのでここでは書かないが,興味のある人は公式サイトで読んでみて欲しい.
人生の不幸に突然見舞われた人が,いかにその運命を受け入れ,自分の運命と対峙していくか,という実話に基づく話である.
決して明るい話ではないが,生きるエネルギーをもらえる映画だと思う.
そして,ストーリーも素晴らしいが,独特のカメラワークと,独特の雰囲気を持った映像美も素晴らしいと思った.
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今日は,上野の科学博物館で開催されているナスカ展を見に行った.
2006年に開催されたもののアンコールらしいのだが,人気があるらしく,一日中30分待ちぐらいの来場者の列が途切れることがなかった.
取り上げているのは,かの有名なナスカの地上絵が描かれた紀元前後のナスカ文明を中心とした南米の文化である.
地上絵もすごいと思ったが,印象的だったのは,土器やレリーフに描かれた動物や人間の絵であった.
どこかコミカルで,日本人が得意とするデフォルメのセンスと通じるところがあると思った.やっぱり,祖先の血はつながっているんだろうなぁと実感した瞬間だった.