ムターとピッツバーグシンフォニー

昨日は、以前より予約していた演奏会を聴きにバーゼルまで行ってきました。今回の演目は、前半がムターの演奏によるブラームスのヴァイオリンコンチェルト、後半がドヴォルザークの交響曲第8番ということで、かなり親しみやすい演奏会でした。

ムターの演奏は、とてもしっとりとしていて、優等生タイプです。バランスがとれているなぁと思いました。細かいところまで正確にきっちり弾くところが、僕のお気に入りでした。

一方、オケのピッツバーグシンフォニーの方は、いかにもアメリカのオケという感じでした。フォルテッシモを最大限大きく、ピアニッシモを最小限に小さく、重要なリズムやメロディーは良く聞こえるように強調して、という感じで、なんといいますか、シャープネスとコントラストのエフェクトを最大限かけた写真を見るようなビビッドな演奏でした。

だけどちょっとやり過ぎの感も無きにしもあらずです。大きなコンサートホールならまだしも、ヨーロッパの伝統的な箱形のコンサートホールでブラスをバンバン鳴らされると、ちょっとうるさいです。そして、あまりにも強調された演奏が延々と続くので、ヨーロッパの強調しすぎない演奏に慣れた観客には、多少食傷気味の感があるように感じました。最近の楽器を使えば大きな音量と芯のある音が容易に出せることはわかりますが、何となくやりすぎでした。

しかも、アンコールは立て続けに2曲も演奏してしまうサービス精神旺盛の楽団で、エンターテインメントを極めたアメリカらしい演奏会の構成だなと思いました。演奏技術は非常に良いだけに、多少、えげつないという印象を持ってしまったのは残念でした。

そして、今回聴いて改めて気づいたことですが、ドヴォルザークというのはかなり前衛的な作曲家だったのだなぁということです。ドボ8の初演の評判がどういうものだったのかよく知りませんが、当時初めて聴いた人はきっとクラシックコンサートのつもりでロックを聴かされたような衝撃があったのではないかと思います。

休憩時間には、ムターのサイン会がありました。クールなヨーロッパの人々にあって、サイン会場は猛烈な人だかりができ、混沌としていました。日本では普通、ちゃんと人を列に並ばせて理路整然とこなすと思うので、この辺の人員の整理は日本の方が上だと思いました。

というわけで、人混みにまみれ、短い休憩時間の間に危うくサインをもらえなさそうな感じでしたが、どうにかサインをもらうことができました。

最後に、今回の演奏会にきていた観客はほぼ90%が50歳代以上の人達だったと思います。日本とは違って、スイスではクラシック音楽が若い世代にも浸透するということはないようです。本場ヨーロッパなのにね。

カテゴリー: 文化, 旅行, 音楽 パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

*