テレビの視聴スタイル

当たり前のことですが、今回参院選の開票速報をニコ動でフォローしたり、W杯をスイスのネットストリーミングで見るにつけ、テレビはいわゆるアンテナをつないで、電波を受信して見る必要はないな、と思うようになってきました。

ニコ動の生放送が面白いのは、10万人以上の視聴者が同時にある番組を見ていると、コメントがリアルタイムでインタラクティブになることです。自分の投稿したコメントが起点となって、その数秒後のコメントの話題が変化したり、出演者がコメントに反応して番組展開を臨機応変に変えてくれるのが非常に面白いのです。これ、何気ないことですが、今までにない番組視聴スタイルです。革命的変化なのではないかと思います。

そして、このリアルタイムな双方向性が可能なのは、インターネットを通じて映像を視聴しているからに他なりません。デジタル放送+電話回線で実現している番組中のアンケート、これもひとつの双方向性への取り組みだとは思いますが、ニコ動のコメント投稿と比較して、番組、視聴者間のレスポンスの早さと、やりとりされる情報量に圧倒的な差があります。

一方、スイスで提供されているネット放送の取り組み、これは日本も学ぶべきものだと思います。日本ではなぜか、テレビ視聴=放送用電波受信という頭(もしくは業界の様々な規制)があって、このしがらみから抜け切れていないような気がします。ノートパソコンでテレビを視聴するためには、テレビチューナーをデバイスとしてインストールし、アンテナを接続するというパターンが多いですよね。たかがテレビを見るだけのためにハードウェアを追加する必要があるのでしょうか?ネットでサイマル放送すればいいだけのことではないでしょうか。

もちろん、ワンセグには屋外でも視聴できるという利点があります。しかし、屋内ではどうでしょうか、むしろ受信感度が悪くなって、窓際に移動したりする必要があります。地上デジタルのHD放送を受信しようものなら、B-CASカードを挿せる機器をUSBなどで接続して、アンテナも用意しなければいけないのです。こんな投資をするぐらいなら、PCに標準で搭載されているWLANを使って、ウェブブラウザでストリーミング放送を受信すれば、受信機器への初期投資もなく、解像度も十分高いディスプレイがそのまま使えて、圧倒的に効率がよいのです。

東京スカイツリーが大々的に話題にのぼっているところに水を差すようで恐縮ですが、これだけインターネットが普及している今日、別に電波でテレビ放送を受信する必要ないんじゃないかと思います。地上デジタルへの移行に莫大な資金を投じている建前、電波に代わる受像方法を提案しにくいのも分かりますが、PCでの視聴を考えると、明らかに電波での受信は非効率なのです。

だから、インターネット経由のサイマル放送の規格を業界で早急に策定して、PCだけでなく、テレビに関しても、テレビアンテナの代わりにLANケーブルで全てのチャンネルが受信できるようにして、視聴者に選択肢を提供するべきだと思います。ネットでの視聴はインターネットの帯域を圧迫するという問題があるかもしれませんが、本質的な、技術的に難しい課題はありません。日本で、ラジオに関しては既に地域限定でサイマル放送が始まっていると思います。同じことをテレビでやればいいだけの話です。

そして、放送局側は、是非リアルタイムな双方向性を生かした番組作りに、肩肘張らずに取り組んで欲しいものだと思います。何かと新しい取り組みを始めようとすると、形式張って最初から完璧を目指そうとするフシがありますが、それでは野心的な取り組みはできないと思います。伝統的な一方向性の番組は維持したまま、裏番組的扱いで実験的な取り組みをすればいいのです。そういう新しい風を、行き着くところまで行き着いてしまった日本は、今まさに求めているのではないではないかと思います。

某S社は、エアボードやロケーションフリーという商品群で、この既成概念に穴を開けようと取り組んできたと思います。でも、なかなか普及しないですね。それは、こういう機器を購入することと、PC用にチューナーカードを買うのとあまり金銭的な差がなく、むしろ機器の運用に技術的な負担が大きいからだと思います。一部のマニアが自分の家でサイマル放送用のサーバを立てることを期待するではなくて、誰でも使える公共サービスとしてサイマル放送を提供してしまえば、ブラウザ経由のテレビ視聴スタイルが、すぐにでも普及するのではないかと思います。

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