ただ野心に突き動かされるような人

ユーザの共感を得ない企業というのは衰退すると思います.

典型なのは,今の民放テレビ局.視聴者のニーズを完全に無視して,芸能界の自己満足に徹したコンテンツを作り続けています.

視聴者は完全に蚊帳の外です.これだけソーシャルメディアが発達しているというのに,画面からこちらに話しかけてこようとする気概が一切感じられません.隣の家のパーティーを窓からのぞき込んでいる感じ.芸能人,まあ,最近はほとんどお笑い芸人しかいませんが,こんな人たちのくだらないコミュニケーションを横から眺めていても何も楽しいことはありません.

過去の栄光が忘れられず,放送局から視聴者に向けた一方通行,すなわち「ブロードキャスト」という古いコミュニケーション形態から脱却ができないんでしょう.もしくは,視聴者からの辛辣なフィードバックが恐ろしくて,とても直視できないのかもしれません.根本的には,メディア側の視聴者に対する高飛車な潜在意識が抜け切っていないことが問題だと思います.

こんな状況下で,テレビ局はよく存続しているものだと思います.まあ,それだけ盤石なスポンサーとの共存共栄関係がまだ残っているのでしょう.でも,これも結局内輪の関係で,視聴者は蚊帳の外ですよね.本当は,視聴者,番組,スポンサーの3角関係が成立しているべきなのに,今はその頂点の一個が無くなっています.スポンサーも,視聴者が離れていっていることを直視すれば,そんな番組のスポンサーになることは利益に結びつかないことがわかると思うんですけど...視聴者の立場からすれば,こんなくだらない番組にお金が回るなら,番組スポンサーの商品なんか買ってやるもんか,と,逆に思うんじゃないかと思います.

テレビ局の話から,ものを作る会社の話に移って考えると,これと等価なことは,ユーザーフィードバックをもらうってことになるのかもしれません.

まあ,これは最近はどこの会社でも普通にやっていることなので,劇的な状況の改善にはつながらないでしょう.かつては技術者の自己満足で,使いもしない機能てんこ盛りの商品を使ってユーザにそっぽを向かれるみたいなことがあったと思いますが,最近はどうでしょうか.フィードバックがあっても無視するとか,改善しないなんてことは,あり得ないですよね.

典型的な勘違いは,ユーザも気づかないような新しい価値を訴求すると意気込んで,結局ユーザがついてこない,という残念な例かもしれませんが,最近はさすがに市場に出す前にユーザ調査ぐらいはすると思うので,こういうのはあり得ないと思います.

あ,でもMicrosoftのサーフェスとかWindows8とかは,かなりユーザ無視,会社の自己満足の典型だな...docomoがiPhoneを導入しなかったのも,ユーザ無視の典型か...

...わかっていても,色々大人の事情があって,できないみたいですね.

で,なんだかんだ言ってみましたが,結局のところ,あまり既存のルールに縛られずに,頭を柔らかくして,自分が面白いとか,欲しいとか,そういう欲求に駆られるものを追求すればいいだけのことなんじゃないかと思います.逆に,こういう楽しいことを追求することに興味がない人,情熱がなくなってしまった人は,エンターテインメントとか研究開発とか,クリエイティビティが必要な仕事をするべきじゃないんだと思います.

テレビ局の没落は,結局のところ,高い給料やステータスだけに興味のあった人が大量に入社して,視聴者を楽しませることや,自分のこうなったら楽しいと思うことを実現させるような,ただ野心に突き動かされるような人がいなくなったことが問題なんじゃないかと思います.

報酬とは,気づかないままに到達しているべき結果であって,目的にすべきじゃないのにね.

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